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ギターと恋とMGのカツ丼/山本恭司
4、5年前だろうか、何となくつけておいたテレビの中から、聞き覚えのあるあの歌声が流れてきた。大塚まさじだ。“おれのあん娘はぁタバコが好きでぇ、いつもぷかぷかぷかぁ”……とその瞬間、「おっ何だ! 何だっけ? この匂いは…」僕の鼻腔の奥は、何とも言えず懐かしいあの匂いに満たされ、喉の奥がグッと鳴っていた。「カ、カツ丼が食べたい。絶対食べたい。」家の近所にも美味い蕎麦屋はある。その店で、すぐさま出前を取ることだって出来た。しかし、僕のカツ丼に飢えた舌は、ある特定銘柄の、しかも遥か彼方、松江でしか手に入れることの出来ないアレしか受け付けようとしないのは分っている。「MGのカツ丼がたべたいよぅ。」叶わぬ思いに胸を詰まらせ、僕は少量の涙と、多量の唾液に我が身を濡らすのであった。
思えば、ギターと恋に明け暮れた青春であった。そして、その青春の舞台となったのがMGであり、その活力となったのが、カツ丼なのだ。
カウンターに座る。今日もザ・ディランIIの“ぷかぷか”が流れる中、「あっちゃん、バナナジュースとね、カツ丼。」昨日もそう言った、おとといもそう言った。明日もそうだろう。「大人になんかなりたくなーい。」と思っていた僕は、決して「いつものヤツね。」なーんてオヤジみたいな頼み方は、しなかった。ところがどうだ。いま僕は、正真正銘の親父になっている。次に松江に帰るときは、あっちゃんに息子を紹介しようと思う。7歳にしてプログレにはまっているアイツに、是非ともカツ丼、食べさせたい。「いいか、松江のミュージシャン達は、皆これを食べて大きくなったんだぞ。お前もミュージシャンになりたいのならこれを食え!」なーんてオヤジっぽく決めながらね。でもなんか、嬉しくなってくるな、そういうのって。
“青春”って、なんか古くさぁい言葉になっちゃったよね。でも、その昔ながらの“青春”ってヤツが、MGには詰まっている。きっと、あっちゃんは、僕の秘密も沢山知っていることだろう。あの木のドアを開くとき、未だにドキドキしてしまうのは、そのせいなのか? それとも、浅川マキ風に“あたいのおとこはぁカツ丼が好きでぇ、いつもパクパクパクゥ”と歌ってくれた、当時の彼女がいるような気がするからだろうか?
ギターと恋とMGのカツ丼。これが僕の「青春の詩」です。MGよ、永遠なれ。
★
MG30周年記念『Eternal Notes』(MG)1999年10月9日発行
より
★MGでの山本恭司(左上)。
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